日本財団聴覚障害者海外奨学金20周年に寄せて

日本財団 常務理事 佐藤英夫

日本財団聴覚障害者海外奨学金事業20周年、誠におめでとうございます。

事業開始当時、日本の教育機関における情報補償等、聴覚障害のある学生に対する支援は、決して十分とは言えず、大学への進学率も低いのが実情でした。また、教育環境の整った海外での留学に挑戦するために十分な奨学金制度も無かったため、本事業に取り組むことにいたしました。

本事業は、より多くの意欲ある学生に海外で学ぶ機会を提供し、留学で得た経験や知識を活かして活躍いただくと共に、教育環境の改善や教育格差の解消など、社会に還元いただくことを目的にするものです。

事業を続ける中で、制度のブラッシュアップを重ね、留学対象国の拡大や、専門性を高めたい社会人を対象としたキャリアアップコースの開設に至りました。研究内容も言語学や教育学から、アートや多様性まで多岐に渡り、30名を超える奨学生が得た知見や経験は実にバリエーション豊かです。

奨学生がそれぞれのフィールドで活躍され、ロールモデルとなることで、聞こえない人はもちろん、様々な制約がある人々の背中を押すことができるものと考えています。

この20年の間、関係者のご努力により、聴覚障害者に対する理解も徐々に進み、2025年には、手話施策推進法が施行され、学校における手話による教育、大学における配慮が施策として明記され、今後、国内の教育環境も改善していくことが期待されます。
創設以来、奨学生自身の意識や能力の向上はもちろんのこと、本奨学金事業が日本やアジア諸国のろう者のコミュニティの発展を担う人材を輩出することで、日本のろう社会全体の底上げに繋がることと思います。

障害の有無、年齢、性別や国籍を超えて、誰もが対等な立場と機会を享受し、社会の一員として参画する共生社会の実現に向けて奨学生の皆さんの益々の活躍を大いに期待しています。