日本財団聴覚障害者海外奨学金事業20周年の挨拶
NPO法人日本ASL協会
会長 武田 太一
「聴覚障害があるけど、海外で学びたい!」
子どもの頃はそんなことを漠然と思っていました。それを叶えてくれたのが、我が日本ASL協会が始めた日本財団聴覚障害者海外奨学金事業です。その事業も2004年の開始から20周年を迎えました。
日本ASL協会は過去に米国留学を経験した、あるいはASL(アメリカ手話言語)を学習した方々が集まって設立した団体です。1988年にスタートし、30年以上の活動実績を積み重ねてきました。これまでに海外から招聘講師を招いてASLクラスを開催したり、ここ近年は東京デフリンピック2025の開催に伴い国際手話クラスも増設したりしてきました。コロナ禍の間は受講生が思うように集まらず、苦しい思いもしましたが、なんとか皆様の支えのおかげで続いてきました。
そんな当協会の留学奨学金事業は2004年に第1期生を送り出してから、現在までに30名以上の留学奨学生がいます。私もその中のひとりです。学生の頃に日本ASL協会の存在を知り、ちょうどその頃に留学奨学金事業が開始しました。子どもの頃に思っていた海外で学べるチャンスがやってきたのは言うまでもありません。ろう・難聴者にとって英語やASLは第三・第四言語ともなりうる上に、これまで留学経験者の少なさから情報もそれほど多くはありませんでした。この事業がスタートしたことによって求めていた支援を得られるというのは大きな意義があります。私はろう重複児・者の支援をテーマに米国留学を果たしましたが、他の奨学生たちもそれぞれ自分が決めたテーマで学識と経験を留学先で自分のものにしてきました。事業開始当初は米国限定でしたが、ここ数年は留学可能範囲が広がり、カナダ・韓国・イギリスに留学した奨学生もいます。
帰国後は留学奨学生同窓会及び日本ASL協会の理事、のちに会長としてこの事業を陰ながら応援してきました。この20年の間に日本もさまざまな整備が進められ、「障害者差別解消法」「手話言語施策推進法」などが制定されてきました。法が制定された後、私たちの生活が変わってきたのかなど留学奨学生たちが思っていることをまとめたのがこの記念誌だろうと思います。それぞれが留学地で学んだこと、また日本やアジアで活かしていきたいことを是非お読みいただけたらと思います。
この事業を20年もの間支援し続けてこられた日本財団には言葉では言い表せないほど感謝しています。私個人も留学奨学金事業のみならず他の分野でも日本財団にお世話になる機会が多く、このような手厚い支援をいただける数少ない団体とのご縁があったこと、心からお礼を申し上げます。私たち日本ASL協会役員及び留学奨学生一同、多大なる支援に対してのお返しとして日本及びアジア諸国でのろうコミュニティの発展に尽力を続けていくことを約束します。





